君ノ声
赤面するどころか、本気にしたのか。
真剣な顔つきのまま顔を近づけてきた。
「………!」
じっと見つめられ、思わず驚いて目を見開いてしまう俺。
〝そうか〟は躊躇することなく顔を寄せてくる。
…は?
…え?
〝そうか〟ではなく、状況を全く理解できない俺の方が動揺している。
嘘に決まってんだろ、なんて言って逃げようかと思ったけれど、なんだかそれじゃあ情けないと思ったから、状況が理解できないまま固まることしかできなかった。
ジーっと見つめられる。
顔が近寄ってくる。
さっきの女とは比べようがない顔立ち。
申し訳ないが、可愛いとは言えない顔が迫ってくる。
ドキドキなんて緊張するはずはないのに。
なのになぜだろう?
…若干ドキドキする。