君ノ声
女慣れはしている。
この程度のことでドキドキするはずがない。
とうの昔になくした感情だ。
そんな感情…過去に置いてきたはずなのに。
なのに。
そのはずなのに。
「………っ」
思わず目を逸らしてしまった。
…気持ち悪ぃ自分。
くるか? なんて、思わず身構えた。
けれど触れたのは唇のような柔らかな感触ではなく、〝そうか〟の細い指の感触だった。
勘違いだったらしい。
「………」
か、勘違いだったらしい。