君ノ声
俺は無言のまま立ち上がり、〝そうか〟の脇を通って出口へと向かおうとする。
けれどそれを止めたのは小さな手だった。
袖を掴まれる。
ゆっくりとした動作で振り返る。
【リボン 返して】と書いたボードを押し付け、困ったような顔をする〝そうか〟。
俺は一度視線を天井へと向け、そして〝そうか〟へと戻す。
「今度、また会おう?」
ゆっくりと口角を上げ、にんまりと笑みの形を作る。
ついでに若干首も傾げてみたりした。
そんな作り笑いを超えた笑みを見た〝そうか〟は、怯えたような顔つきになった。
気を抜けば腰を抜かして泣き出してしまいそうな顔だ。