君ノ声
不思議な彼女
俺に近づいてくる奴なんて、ろくな奴じゃない。
しいて言うならば、底辺の人間とでも言っておこうか。
それを言った時点で自らも底辺人間と言っていることに変わりはないのだから、自滅と言ってしまえば自滅なのだが。
まぁ…所詮自身も底辺の底辺だがな。
「ねーえーってばーあ」
絡みつくような粘っこい、世間では甘いのなんちゃら言うような声で背後から聞こえてくるのはそんな声。
もはや原型に戻すことが不可能なくらい、かかとを踏み潰した上履きを引きずるように歩いていた自身の足が止まる。
面倒だと思いながらゆっくり振り返ると同時に、首に回ったそいつの腕。
突然のことで。
けどよくある光景で。
しかしボーっと歩いていたせいで、首が少し軋んだ気がした。