君ノ声
いつもなら気にしないはずだった。
むしろ物凄い形相で睨み付けて、一言も喋れないように静止させているはずだった。
今回もそうなはずだった。
何を考えているのか結局分からないその女は、俺を睨み付けたまま口を開いた。
声を発する前に黙らせてやろう、そう思った俺は、女と同じように口を開いた。
けれど違った。
「……は?」
俺の口からは情けない声が零れ落ちた。
何が起きているのか分からないその女に、俺は再度硬直してしまった。
だっておかしいだろう?
俺が眉間にシワを寄せるにつれて、眉を吊り上げて怒り始める女。
だけど―――…
ふざけてんのか?
…―――声が出ていない。