ファンタジー・ブレイカー
プロローグ
人類最大のテーマは何かと問われれば、大抵、挙げられるのは“愛”か“死”。
しかし、その本質、真実は、人類の長い歴史の中で繰り返し模索されながらも、未だに分からないままである。
愛とは何なのか。死とは何なのか。
誰も、そんな一見シンプルな問いに対し、明確な答えを返せないのだ。
何故なら、誰一人として、愛や死を理解してはいないからである。
上っ面の、記号としての、不確かなものとしてしか、捉えることができずにいるからである。
そしてだからこそ、哲学という学問が存在するわけだが、しかし要するに、人間に分かることなどほんの一握りしかない、というのが現状なのだ。
愛や死どころか、夢も希望も、友情も。
自分が思い、感じ、考えることすら、多くの謎を孕んだままだ。
そしてだからこそ、あの幻想破壊者は現れたのだろう。
「幻想(ファンタジー)なんて、壊れてしまえばいい」
それが口癖だった、ありとあらゆるものに対し否定的だったあいつは。
あいつは自分自身さえ信じてはおらず、ただ幻想と見なしたものを破壊することだけにその全存在を費やした。
その結果が、あの何とも後味の悪い幕切れだ。
俺はあいつのことを忘れない。
愛も友情も夢も希望も一切認めず受け入れず、侮蔑し軽蔑し否定し――――
最後には自分自身を壊してしまった、あの男のことを。
……俺が語るのは、そんな滑稽な男の話だ。
時が流れ誰もがあいつを忘れようと、俺だけはあいつを忘れない。
今でも目を閉じれば、あいつの笑顔が脳裏に浮かぶのだ。
害意と悪意に満ちていながら、どうしようもなく爽やかだったあいつの笑顔が。
しかし、その本質、真実は、人類の長い歴史の中で繰り返し模索されながらも、未だに分からないままである。
愛とは何なのか。死とは何なのか。
誰も、そんな一見シンプルな問いに対し、明確な答えを返せないのだ。
何故なら、誰一人として、愛や死を理解してはいないからである。
上っ面の、記号としての、不確かなものとしてしか、捉えることができずにいるからである。
そしてだからこそ、哲学という学問が存在するわけだが、しかし要するに、人間に分かることなどほんの一握りしかない、というのが現状なのだ。
愛や死どころか、夢も希望も、友情も。
自分が思い、感じ、考えることすら、多くの謎を孕んだままだ。
そしてだからこそ、あの幻想破壊者は現れたのだろう。
「幻想(ファンタジー)なんて、壊れてしまえばいい」
それが口癖だった、ありとあらゆるものに対し否定的だったあいつは。
あいつは自分自身さえ信じてはおらず、ただ幻想と見なしたものを破壊することだけにその全存在を費やした。
その結果が、あの何とも後味の悪い幕切れだ。
俺はあいつのことを忘れない。
愛も友情も夢も希望も一切認めず受け入れず、侮蔑し軽蔑し否定し――――
最後には自分自身を壊してしまった、あの男のことを。
……俺が語るのは、そんな滑稽な男の話だ。
時が流れ誰もがあいつを忘れようと、俺だけはあいつを忘れない。
今でも目を閉じれば、あいつの笑顔が脳裏に浮かぶのだ。
害意と悪意に満ちていながら、どうしようもなく爽やかだったあいつの笑顔が。