バニラ
阿部と過ごすことで葵は一種の寂しい心を誤魔化していた。

阿部は自分を理解してくれるたった一人の貴重な存在だった。

きっかけはとても公で言えるようなものではないが、きっと私達は出会うべくして出会ったのだと葵は信じていた。


しかしなぜ彼は自分の恋人ではないのだろう?

どうしてか。

神はそういう役目として自分に阿部と出会わせたのではきっとない?

そして、安部はもはや葵にとって家族同然の存在である。

家族は恋人にはなれない。
そんなふうに説明すれば理解を得られるだろうか。
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