妖魔05~正道~
「やだやだやだやだ!!お母さん!死んじゃやだよ!」

「吟ちゃん、琴は吟ちゃんと遊び足りないにゃ!」

両者が大声で泣き喚きながら、吟の身に縋りつく。

「お前達は、本当に私に依存してるな」

ゆっくりと二人の頭に手を置いた。

「よう、ヤブ医者」

親父が手を上げて、前に出てくる。

「勝ち逃げで悪いな」

「あの世に持っていく土産にしちゃ、悪くはない」

「それより、お前に郁乃を託した事は、間違いじゃなかった」

「あの女を御しきれるのは俺だけさ」

笑いの中に、寂しさが混じっているようにも思えた。

それだけ話すと、親父は部屋から出て行った。

「靜丞」

傍に立っていた、爺さんに話しかける。

「だから、あの時に言ったのじゃ。お前は家事をしていたほうがいいとな」

「そんな舐め腐った事をいつまでも抜かすのはお前だけだよ」

「まあ、その様子だと、納得の生き方をしてきたようじゃのう」

「そうさ」

「小僧に任せた事は、間違ってはなかったという事か」

「ああ、お前と出会えたから、丞とも出会えた。それだけは、お前に感謝する」

「ふ、ゆっくり休め」

爺さんは背中を向けて、部屋を出て行った。

「吟さん」

美咲が今にも泣きそうな面になりながら、立っている。

美咲は治療を途中で抜け出してきたのだ。

「私、吟さんともっと、お話したかったよ」
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