妖魔05~正道~
「本当なら、今の状態が正しい」
「え?」
きっと、過去の出来事を思いかえっているのだろう。
過去では、美咲が床に伏せていたからな。
「私は、丞も、お前も好きだ」
「吟さんは、私の小さい頃に色々とよくしてくれた。だから、私も大好きだよ」
「そうか」
「そう、だよ」
美咲の涙が自然とこぼれた。
美咲は悲しさのあまり、言葉が出ないらしい。
自分の痛みよりも、他人の痛みを優先する性格は変わらない。
「耳を貸せ」
美咲は吟の口元に耳をやる。
「うん、解った」
何かを納得したものの、我慢できずに部屋を出て行く。
クルトも、前へと出てくる。
「オラはお前とは付き合いは短いが、お前は今まで出会った中で一番すげえ奴だ」
「そうか」
「オラ、お前みたいな奴の事は絶対に忘れないぞ」
「女に覚えていてもらっても嬉しくないが、お前なら、いい」
「ふん」
威勢よく鼻を鳴らして、部屋を出て行った。
「ワラワが子供の頃から、そなたは変わらぬ姿じゃったな」
龍姫は愛しむような目で吟を見下ろしている。
「お前の父親と、同じくらいの年齢である事には変わりはない」
「そなたもまた、原初に近き者じゃったな」
「だからといって、私には大した事は出来ない。原初に近き者の中でも、弱い部類だった」
「お前と出会った時の事は、今でも忘れぬ」
「え?」
きっと、過去の出来事を思いかえっているのだろう。
過去では、美咲が床に伏せていたからな。
「私は、丞も、お前も好きだ」
「吟さんは、私の小さい頃に色々とよくしてくれた。だから、私も大好きだよ」
「そうか」
「そう、だよ」
美咲の涙が自然とこぼれた。
美咲は悲しさのあまり、言葉が出ないらしい。
自分の痛みよりも、他人の痛みを優先する性格は変わらない。
「耳を貸せ」
美咲は吟の口元に耳をやる。
「うん、解った」
何かを納得したものの、我慢できずに部屋を出て行く。
クルトも、前へと出てくる。
「オラはお前とは付き合いは短いが、お前は今まで出会った中で一番すげえ奴だ」
「そうか」
「オラ、お前みたいな奴の事は絶対に忘れないぞ」
「女に覚えていてもらっても嬉しくないが、お前なら、いい」
「ふん」
威勢よく鼻を鳴らして、部屋を出て行った。
「ワラワが子供の頃から、そなたは変わらぬ姿じゃったな」
龍姫は愛しむような目で吟を見下ろしている。
「お前の父親と、同じくらいの年齢である事には変わりはない」
「そなたもまた、原初に近き者じゃったな」
「だからといって、私には大した事は出来ない。原初に近き者の中でも、弱い部類だった」
「お前と出会った時の事は、今でも忘れぬ」