ヘタカレ王子様。



あ。


戸唖(トア)……。



「やっぱり屋上はいいなあ…」


…譫言呟いてる場合?

私…あんたのすぐ後ろに居るんですが…。


でも、私は彼の独り言が気になって、しばらく黙ってみた。





「はやく……

誘わないと……」





えっ。


「遊園地なんて…ははっ。

子供っぽいなぁー」


みるからに…………私。



戸唖。

私のヘタレ彼氏。


中学に入ってから、こいつは急に身長が高くなった。

小学校では私が上だったのに……嬉しいことだけど、複雑。




と、戸唖がポケットからよがんだ紙を取り出した。


なんだろう。


「あーっ!!」



うあっ。



危なかった……声が出そうになった…。


だけど戸唖がそれを知るわけがなく、



「期限来月までだあ…!
俺ムリかもしんねっ…」


私は、

深く息を吐いた。



気配を消して戸唖の背後につき、がっくりと肩を落とした戸唖の後頭部に、




「まったくなんなのよ、
この馬鹿!」




「ぅおっ!?」


戸唖の体が、屋上から落ちそうに――




「ちょっ…」


あわてて戸唖の腕を握ったはいいものの、逆に私の方が吹っ飛んだ。



嫌な感覚が心臓に悪影響…



私は順調に屋上から落ちて――







「世奈っっ!!」







一瞬離れた戸唖の腕が、

私の腰元に巻き付いて


私は戸唖に、抱き寄せられる形で助かった…。




戸唖はふぅ、と一息ついて

仕方なさそうに、



「世奈は、危なっかしいな……」



一言、




「誰のせいじゃい!!」





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