ヘタカレ王子様。
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「もう夜かぁー…」
午後6時。
遊園地も、
私たちの初デートも
終盤に差し掛かっていた。
「なんか、ほとんどカフェだった気が…」
「気が、でしょ。
気のせいよばか」
そう釘を刺すと、
戸唖は小さく俯いて
「………はぃ…」
「ね。最後に観覧車、乗ろうっ!」
なんてベタなシチュエーション…。
戸唖が…
何かしてくるなんて、
絶対にありえないのに…。
「うん。
そうだね」
「最後のご乗車、
ありがとうございますー」
楽しそうな笑顔で仕事をする女の人が、
なにかを企んだような目で、
私を見送った…。
期待…していんですかね。
「わゎゎゎゎゎゎ…!
すっごいきれい…!!」
観覧車の中で、私はワクワクした声を馳せて
無邪気に夜景に食いついていた。
そして、その目の前で
緊張したように両手を結ぶ、戸唖。
なにせ…こんな密室で
彼女と二人きりなど、
まったくといっていいほど
なかったからだ…。
ゆっくりとした動作で、
ついに観覧車は最高潮に
達した。
はっきりとした夜景が視界に広がり、私はまた歓声。
と、
真剣な、緊張した顔で、
戸唖が話を切り出した…