満月の夜に私は彼に囚われる
「名前、名前、教えて」


保健室を出ようとする彼を引き止める。


今、聞かないときっと後悔する。


「・・・俺の名前、知らないの?」


責めるような視線に、言葉を失う。


「ハルト、そんなに怒るなよ。一度しか会ってないんだから、知らないのは無理ないだろ」


どこか、含みのある恋人の顔に、不安を覚える。


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