満月の夜に私は彼に囚われる
「楓」


名前を呼ばれ、驚いていいはずなのに、無性にしっくりくるその響きに、ゆっくりと振り返る。


この学校で、私の事を名前で呼ぶのは、親友の小百合くらいだ。


早瀬君?


「俺を思い出せないなんて、言わないよね?」


いたずらっぽく首を傾げるのは、昔のままの彼。


なぜ、今まで忘れていたんだろう。


彼は私の大切な人。


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