スティグマ~いつかあなたへと還る~
 ふと、こちらを見上げた修道女はまだ灰色の服で、マスクをし、途方に暮れたように手元のじょうろの水をこぼした。


 しきりに首を振って、院内へと走り込んだ。
 


 呼吸を乱してダーナは追いついて、だからいやだったのだ、と顔をしかめた。
 


 ルナのいうことはすなわち聖なる乙女、聖乙女候補の命令に等しい。


 ダーナは目付ということで部屋を与えられることになっていた。


 ルナには優しい姉のような存在だった。
 

 しかし、彼女にはいまさら四つも年下のルナに仕えるなどぴんとこない。


 それでなくとも、子供同士、友情を育んでいたのだから。
 

 だが、彼女の父は言った。


 ルナには大きな後ろ盾があり、それをルナ自身に明かすことを禁じられていたから、ダーナはよく聴き覚えた。


 ルナはその生まれからすでに聖なる乙女のはしくれなのだと。


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