スティグマ~いつかあなたへと還る~
 ダーナの心の中で、普段眠っている魂の光と、闇が渦巻く。


「ルナ、逃げて。私を見ないで!」


 怒りと悲しみにこぼれ落ちる涙。


 ここで死ぬわけに行かない。


 守るべきものがある。


 奪われてはならぬものがある。


 たとえ異端と呼ばれても。


(ルナ!)





「私に守れればいい、他にだれにもその役はできないから。他に方法がないから」


 彼女は涙などぬぐおうともしなかった。


 目の前の男を凝視し、一度たりとも眼をそらさなかった。


 それが、戦士の証だ。


「くっ、その蛇のような印を隠すが良い。ここはアルファ族のいるような場ではない」


 アルファ族。


 かつて聖塔にくみした一族によって謀略の限りを受け、ほとんどが山奥に落ち延びた一族である。


 なぜ、この男にそれがわかる……


「計画はわしが立てた。あとは実行させるだけ。簡単なものだったよ」


「貴様、ただの人買いではないな」


「ああ、だがもう、眠りたい。ここの泉は飲むとよく眠れる。薬効があるのだよ。邪魔しないで欲しい」




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