ママ、こんなに軽かった?
そして時は現代に戻る。
「ねえ、ちょっと。ここ揉んでよ。きつーく」
母はめっきり年をとり、以前は二日で一回だった、マッサージがもう、毎日になってしまった。
「はいはい」
と、ふくらはぎに向かってゆくと、脚をばたばたされた。「くすぐったい」ってちょっとー、どんだけめまぐるしいのこの人はー。でも、私が働かなくても暮らしていけるのも母のおかげだし。高校行きたくないなら行かなくていいって言ってくれたのも彼女だ。
そんな母の夢はタカラジェンヌになることだったという。その夢には思いもかけない障害があった、というわけだ。つまり私。出てった父の最後はいわないで。
「あー、ふんで、ふんで。そう、そこ気持ちいいー」
彼女はソファの上でぐったりとして、朝にきつめに巻いた髪が崩れてる。そんなことを気にしてはいられない、と言うように、そのうち眠ってしまう。いつものことだ。
彼女を背負って寝所まで運ぶのも、いつもの……
「あ」