ママ、こんなに軽かった?
べろんべろんと顔中嘗められた。人なつこいのだか、味見してるのか怖くて想像したくない。犬は苦手だ。何でこんなに猛烈に懐かれてるのか、どうにも身に覚えがない。
(窓を閉めよう) しごくまっとうな打開案に身を乗り出してみる。すると犬は身を乗り入れてくる。するすると入り込んで、母の眠っている部屋へと向かう。細く開いたドアの隙間に鼻先をつっこんでいる。開けられてしまった。やばっ!
「う、うーん」
母のエスオーエスが聞こえたら、飛び出して行くつもりだった。
「ううーん、誰か、助け……」
細い嘆きの声がする。察するに、この奥で上に乗っかられているに違いない。
私は父が残していった唯一の護身用の、木刀を握りしめた。
「こらー!」
一喝するところりとまろびでて、まろ坊やはきちん、とおすわり。
「良いお顔してもだめですよ。こちらには行かせません。出てってちょうだい」
(なめられてたまるか)
と、いう顔を作ってみるのだが、ご近所さんは遠慮が少ない。
一方こちらは及び腰。かといって、母がいるのだ。無防備に眠りながら……一人だけ逃げるわけにもいかない。そう思っていたら、まろ坊やはちょっと切なげに鳴いて、木刀を持っていた手の袖を引っぱった。
「なによ! ひとんちの寝室に入り込むなんて、なんていう犬なの!」
レトリバーです。じゃなくって!
(叩くわよ)
と言って手を振り上げているのに、意味もわからないのか、けろっとしている。
お育ちがたいへんよろしい。現代社会では愛されて育った子をそういうのだと本で読んだことがある。もしやそういう子が無警戒にさらわれてしまったりするんだろうか。想像もつかないが、実話だというから物騒だ。
さておき、こちらでは問題はイッコも解決していない。
気になるのは、まろ坊やがしきりに服を引っぱること。なんかあるらしい。こんなこと初めてだ。なんなのだろう。疑問。しきりに母の枕の方へと誘おうとしているように、見えなくもない。しきりに鼻を鳴らしている。どれどれ。
(窓を閉めよう) しごくまっとうな打開案に身を乗り出してみる。すると犬は身を乗り入れてくる。するすると入り込んで、母の眠っている部屋へと向かう。細く開いたドアの隙間に鼻先をつっこんでいる。開けられてしまった。やばっ!
「う、うーん」
母のエスオーエスが聞こえたら、飛び出して行くつもりだった。
「ううーん、誰か、助け……」
細い嘆きの声がする。察するに、この奥で上に乗っかられているに違いない。
私は父が残していった唯一の護身用の、木刀を握りしめた。
「こらー!」
一喝するところりとまろびでて、まろ坊やはきちん、とおすわり。
「良いお顔してもだめですよ。こちらには行かせません。出てってちょうだい」
(なめられてたまるか)
と、いう顔を作ってみるのだが、ご近所さんは遠慮が少ない。
一方こちらは及び腰。かといって、母がいるのだ。無防備に眠りながら……一人だけ逃げるわけにもいかない。そう思っていたら、まろ坊やはちょっと切なげに鳴いて、木刀を持っていた手の袖を引っぱった。
「なによ! ひとんちの寝室に入り込むなんて、なんていう犬なの!」
レトリバーです。じゃなくって!
(叩くわよ)
と言って手を振り上げているのに、意味もわからないのか、けろっとしている。
お育ちがたいへんよろしい。現代社会では愛されて育った子をそういうのだと本で読んだことがある。もしやそういう子が無警戒にさらわれてしまったりするんだろうか。想像もつかないが、実話だというから物騒だ。
さておき、こちらでは問題はイッコも解決していない。
気になるのは、まろ坊やがしきりに服を引っぱること。なんかあるらしい。こんなこと初めてだ。なんなのだろう。疑問。しきりに母の枕の方へと誘おうとしているように、見えなくもない。しきりに鼻を鳴らしている。どれどれ。