ママ、こんなに軽かった?
お隣さんが片手を振って、
「もともと、誰のものでもなかったのだから。そちらが引き取り手になってくれるなら、ねえ……」
と周囲を見渡す。つられて私も見た。公民館で集会堂になっている所へ集まって来ていたひとびとがこちらを見ていた。初めて人間の顔が美しいと感じた。みんな、笑ってた。老いも若きも。その場にいた人々、みんな。こくこくと浅く頷くひともあったし、重厚にするひともいた。まろ君をなでてゆくひとも。
「いいんだよね、おねえちゃんのまろになっても、ここからいなくなっちゃうわけじゃ、ないものね?」
と、こそっと子供さんに耳打ちするお母さんもあった。その子供さんは黙って奥の部屋へと戻っていった。なんだか私は落ち込んだ。私がまろ君を介助犬にしようなんて、勝手なんだ。この子にしたら、迷惑なんだ……て。
仲のよい友だちがこんな小娘に奪われようとしている、そんな時まで、ひとはそれぞれの姿を示す。私はもう、自分の心にあらがおうという気持がしなかった。
「これから毎日、まろ君と君のお家に散歩にくるよ」
心から言った。でも、哀しい結果を予感して、私の声は頼りなく尻つぼみに震えた。
がたん、ばたん、と物音がして、お子さんが、まもる君が表から顔を出した。冗談みたいだ。
「もともと、誰のものでもなかったのだから。そちらが引き取り手になってくれるなら、ねえ……」
と周囲を見渡す。つられて私も見た。公民館で集会堂になっている所へ集まって来ていたひとびとがこちらを見ていた。初めて人間の顔が美しいと感じた。みんな、笑ってた。老いも若きも。その場にいた人々、みんな。こくこくと浅く頷くひともあったし、重厚にするひともいた。まろ君をなでてゆくひとも。
「いいんだよね、おねえちゃんのまろになっても、ここからいなくなっちゃうわけじゃ、ないものね?」
と、こそっと子供さんに耳打ちするお母さんもあった。その子供さんは黙って奥の部屋へと戻っていった。なんだか私は落ち込んだ。私がまろ君を介助犬にしようなんて、勝手なんだ。この子にしたら、迷惑なんだ……て。
仲のよい友だちがこんな小娘に奪われようとしている、そんな時まで、ひとはそれぞれの姿を示す。私はもう、自分の心にあらがおうという気持がしなかった。
「これから毎日、まろ君と君のお家に散歩にくるよ」
心から言った。でも、哀しい結果を予感して、私の声は頼りなく尻つぼみに震えた。
がたん、ばたん、と物音がして、お子さんが、まもる君が表から顔を出した。冗談みたいだ。