俺様彼氏に気をつけて!?
話しながらふと気づいた。

私の話が進むにつれて佳奈の顔がどんどん暗くなっていく。

「……というわけ。納得いった?」

説明を終えて一息吐いた。

やっぱり佳奈は何かおかしい。

俯いたまま何も言わない。

さっきまであんなにはしゃいでたのに……。

そんなしばしの沈黙を破ったのは水樹だった。

「ひな、あなたとんでもないことしでかしたわね」

腕を組んで「はぁー」とため息を吐きながら言った。

うぅっ。

何も言い返せない。

とんでもないこととは、きっと千晶を殴ったことを指しているのだろう。

私は普段から、何かあるとすぐ手が出ていつも水樹に叱られていたから。

「はい、反省してますぅ……」

「しかもまさか、あの市瀬千晶と付き合うなんて……」

いや、それ誤解だから! 付き合うっていったって一時的なものだから!!

「ったく何考えてんの市瀬は。ひなをいいように利用して」

少し怒ったように言った。

そういえば水樹は千晶のこと何か苦手だと言っていたな。

なんでも、「あの透かした態度が気に食わん!」とか言って。

あからさまに睨んだりしてたっけ……。

まぁ真面目で優等生な水樹にしてみれば、そう思うのも無理は無いかもしれないけどね。

と、そんなことは置いといて。

「佳奈? さっきからどうしたの?」

顔を覗き込みながら話しかけてみた。

「へ!? あ、あぁ……何でもないよ!」

そうは見えないけど……。

でも佳奈は「えへへ、ゴメンごめん……ぼーっとしてたよ」と言って笑っていた。

だから私も無理に聞こうとせず、「そっか」とだけ言ってまた歩き出した。

それは水樹も同じなようで、何事も無かったかのように振舞っていた。

……佳奈がどんなことを思っていたかなんて考えもしなかった。

それから私は家に帰り、ぐっすりと眠った。
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