俺様彼氏に気をつけて!?
お弁当だって私のじゃなくても買えばいいんだし。

そう思ったけど、言ったらもう彼女解消されちゃう?

また手の届かない存在に戻っちゃうの?

どうして? どうしてこんなに寂しい気持ちになるの?

「……どうした、ひな」

千晶が黙って俯いてしまった私の顔を覗き込んできた。

……やめて。

そんな心配そうな目で見ないで。

私バカだから勘違いしちゃうよ?

「……まぁ確かに、ひなが彼女でいる一番の意味は無くなったけど」

まるで私の考えていたことが分かってるようなことを言った。

それを聞いて少しビクッっとした。

もちろん千晶もそれに気づいていたと思う。

私は身構えた。

何を言われても大丈夫なように。

もともと私は嫌々彼女にされたんだから、解消されたらむしろ喜ぶべきなんだ。

そうだよ!

心の中で強く自分に言い聞かせた。

そしてゆっくりと千晶が口を開いた。

けれど聞こえてきた言葉は……

「それでも、お前は俺の彼女だよ」

そんな優しい言葉だった。

「……ふぇ?」

思わず変な声を出して顔を上げると、千晶は優しく微笑んでいた。

「何で……?」

そう聞き返すと、今度はゆっくりと私の頭を撫でながら言った。

「一ヶ月頑張ったら殴ったこと許すって言ったっしょ。今やめたら一生許してやんねーよ?」

「千晶……」

ちゅっ

「……ッ」

今の……き、キス?

ほっぺにキスされたの?

「あぁゴメン。泣きそうな顔してたから、ついね」

そう言ってにやりと笑うと、またお弁当を食べ始めた。
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