俺様彼氏に気をつけて!?
けれど特に痛みは無かった。

おかしい。あの高さから落ちたならこんなんでは済まないはず。

まだ朦朧とする意識の中で、そっと目を開ける。

そこには、男の子がいた。

ぼやけて顔は分からなかったけど、どうやらその人が私を受け止めてくれたらしい。

お礼を言おうとしたけど声が出ない。

あ、だめ……

意識が再び朦朧としてきた。

その男の子の姿も闇に包まれてもう見えない。

全身の力がガクッと抜けるのを感じる。

そのとき、

「……ひな――…」

すぐ上から辛そうな声がした。

私、この声知ってる。

懐かしい……あれからどんなに追い求めても聞けなかった声。

大好きな声。

千晶の……声。

じゃあ今私を抱きとめてくれているのは千晶?

千晶が助けてくれたの?

確かめたい……

もう一度目を開けようとしたけど、それは出来なかった。

「無事で良かった……」

その声を最後に、私は意識を完全に手放した。




「んっ……」

「良かった、気がついたのね」

目を開けるとそこは保健室のベッドの上だった。

保健室の先生が私を見下ろしている。

「あの、わたし……」

「階段から振ってきたらしいわよ? あなたをここまで運んできてくれた子が言ってたわ」

階段から?

運んできてくれた子……

あっ!!!

私はガバッと布団を跳ね除けて身体を起こした。
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