俺様彼氏に気をつけて!?
あと10m。

5m、3m……

1m。

「っ千晶!」

ようやく追いついて名前を呼んだ。

けれど……

千晶は振り向きもしないで歩き続ける。

すぐ後ろで呼んだんだよ?

聞こえてないはずない。

じゃあなに? 無視したってこと?

私は勇気を出してもう一度呼んだ。

今度は千晶の腕を掴んで。

「ねえ、千晶!!!」

千晶は腕を掴まれたことでようやく足の動きを止めてくれた。

そしてゆっくりと振り返る――

「放せよ」

そんな冷たい一言を放って。

「ちあ、き?」

「放せって言ってんの分かんねーの?」

放心している私をよそに千晶は腕を振り払った。

私の手は行き場を失ったまま宙で固まっている。

何でそんなこと言うの……?

「あの、さっきはありが――」

「目障りだ。消えろ」

お礼を言おうとした私の言葉を遮って言った。

「二度と俺に関わるな。俺とお前は他人以外の何でもない」

それだけ言って、踵を返して歩いていってしまう。

待って、まだ言いたいことがあるのに!

「待って……待ってよ!」

追いかけようとしても足が動いてくれない。

怖い、怖い。

私は必死に声を張り上げた。

「千晶ッ!!!」

けれど千晶はもう立ち止まってはくれなかった。

どんどん小さくなっていく背中を見ているしか出来なかった。
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