俺様彼氏に気をつけて!?
「話しならいつでも聞くから、もっと頼んなさいよ?」

「ありがとう」

でも水樹、もう十分助けてもらったよ。

本当にありがとう。

「おーいお前ら席着けー。宿題集めるぞー」

やまもっちゃん、昨日はそれどころじゃなかったんだよ。

やってるわけないじゃん。

それを言ったら案の定怒られた。




今日は時間が過ぎるのが早い。

まぁそれはずーっとぼんやりしてたからだと思うけど。

私は放心したまま一日を過ごし、気付くともう放課後。

あれ? お昼ご飯食べたっけ?

「ひなぁ、帰ろ?」

佳奈が心配そうに顔を覗き込んでくる。

水樹も横にいる。

「ごめんね、これからちょっと用事あって」

これは嘘。といっても行きたいとこはちゃんとある。

それは屋上だ。

今はなんとなくそこに行きたかった。

「そっかぁーじゃあまた明日ね!」

ばいば~いと明るく手を振ってくれる佳奈。

気を使ってくれてるんだなぁ。

嬉しいよ。

私もばいばい、と手を振って二人を見送った。

「ふぅー……」

さてと、行くか。

屋上。

私は鞄を掴んで教室を後にした。

――屋上へ向かう途中にある階段。

そこを上りながら昨日のことを思い出す。

私が貧血で倒れたとき、助けてくれたのが千晶だった。

あのとき微かに聞こえた

『無事で良かった』という声。

あの言葉の意味、そして土手で千晶が見せた悲しそうな顔の意味。

それは結局分からずじまいだった。
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