俺様彼氏に気をつけて!?
ま、分かったからってどうということはない。

全てはもう終わったこと。

諦めると決めたあの夜、一粒も涙を零さなかった私はなんて薄情な女。

千晶を好きでいる資格はない。

私は一歩一歩ゆっくりと階段を上った。

そして冷たく重い扉を両手で押す。

相変わらずの気味の悪い音が静かな空間にこだました。

私は陽だまりの中に足を踏み入れた。




「……嘘」

思わずそんな言葉が飛び出す。

あまりにも驚いてしまって、それしか言えなかった。

言葉が詰まって出てこない。

だってそこには――

「千晶……」

がいたのだから。

いつもの場所に、いつもと変わらず彼はそこにいた。

腕を枕にして眠っている愛しい姿があった。

まるであの日に、千晶と初めてしゃべったあの日に戻ったみたいだ。

彼は帰らないのだろうか?

しばらく見ていても起きる気配はない。

私はあの日と同じように千晶の顔を覗き込んで、横に正座して座った。

「ここはいつでも暖かいね……」

私がここにくるときはいつも日が差していて、優しく包んでくれた。

ねえ、千晶。

私ね?

「私、千晶のこと好きだったよ」

彼が眠っているのを確認して、そっと呟いた。

もう抑えられない。

あの夜、もう関わらないって決めたのに。

千晶の顔を見たら止められない。

どんどん感情が溢れてくる。

「本当は離れたくない」

あれ、おかしいな。

なんで今になって、涙なんか……
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