俺様彼氏に気をつけて!?
という言葉が思わず口から出そうになって慌てて引っ込めた。

「それに俺何も言ってねーのに勝手に泣き出すし、挙句の果てに“命だけはご勘弁を”って……お前マジで俺を笑い死にさせる気かよ!」

そ、そんなこと言われたって……だったら睨んでないで何か言ったらどうなんですか!

というか今思ったけど、この人ってこんなに笑うひとだったんだ……。

いつも女の子に囲まれてるからあまり近くでみたことはないけど、普段はすごくクールってゆうか無口ってゆうか……笑ってるところなんて初めて見たかも。

なんか、

「笑ってるほうが私は好きだな」

って! うっかり声に出しちゃった!! 

どうしよう、今の絶対聞こえたよね?

「おま、今――」

やっぱり聞こえてたみたい。

ちょっと驚いたような目でこっちを見てる。

でも! 嘘じゃないし、変なこと言ったわけでもないし!

もうこうなったら開き直っちゃえ!!

「なんでいつも怒ったような顔してるの? 笑ったほうが絶対いいのに」

「え?」

案の定、さらに驚いてる。

きっと一度も言われたことないんだろうな。

すると、こいつは何か考えるような素振りを見せたあと、私に言った。

「お前、名前なんてーの?」

「え、篠岡ひな……ですけど」

「同じ学年だろ? クラスは?」

「2組です……」

「俺1組だから、隣か……」

そう言って、また何か考え込む。

何だろう?

自然と少し身構えてしまう。

少しの沈黙の後、再びヤツが口を開いた。

「お前さぁ、俺の彼女になってくんね?」

…………

「おい、聞いてんのか」

…………

「おい!」
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