ウラコイ+α
「神田は優しいよ?見せないだけでさ、」
槌谷くんは
お酒を飲みながら笑った
明日はシネマ授賞式
仕事も終わった
昨日、美貴ちゃんと話したけど、
いざ神田君と
話そうと思ったら
中々見つからない。
話さなくていい時は
やたら現れるくせに
「…はぁあ」
「ばばくさいため息。……あなたが田中弥生さんですか」
刺々しい声が後ろからした
振り向くと、
さやという女優さんだった…
髪は長くて珍しい茶髪だった。
「はい、えと…さやさん?」
「名前くらいは知ってるのね、私は橘さや。橘絹子はご存知?」
橘絹子…、
大女優で
知らない人はいない
「はい。」
「…田中さん、彼と仲がいいみたいね。神田怜一さん、」
ちょっと偉そうに言う
彼女に戸惑った。
何を言われるか
うすうす分かっていた。
「けど彼の彼女は私よ。あなたには悪いけど…。」