★ブルーの彼方★
「ごめん、ごめん」



 慌てて棚に積んだ、歯磨き粉の山を片付けようとして腕いっぱいに抱え、一気に落下させちゃった…



あーぁ…ついてないな。


「本当に、夏季ってわかりやすいよね」



「えっ?



「だから、大好きなコスメ並べてる時は、本当に楽しそうに仕事してるのに、そうじゃないとこうだもんね」



 呆れたような顔をしつつも、江利は一緒に箱を拾ってくれた。



「また、河本さん!!



困るんだよね!



商品壊したら、買い取ってもらうからね」



 店長に睨まれながらそう言われた。



「すいません…」



 店長に頭をぺこりと下げた。



「夏季はでも、馬力ありますから。



仕事早いし。



おっちょこちょいではありますけど…」



 江利の言葉に心が温まった。



 江利の言葉に無言で、店長は去っていった。



江利を見る角度を変えると、変わらない温かかいものを見つけた。



変わったのは、もしかしたら私の方なのかな?



平面でしか、江利を見てなかったけど、本当はもっときっと多面的なんだよね…



 江利は拾い終わると、いつものように、颯爽と歩いていってしまった。


「ありがとう!」



 私は江利の背中に向かって言った。



 江利は後ろ姿のまま、手を振って、仕事に戻っていった。
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