★ブルーの彼方★
「ちょっと! 聞いてるの?!」



 母は少し、いらだっているみたいだった。





 しかし私の頭の中は今、母のデートモードのメイクを、時間内に完成させることで、頭がいっぱいなんだ。





 私は真剣に、母の顔全体のメイクのバランスを見つめてた。




ちょっと、右側が上になったかな……意外とチークを左右対称にするのって難しい。



「ちょっと、動かないでよ」



 チークを修正しながら、私もイライラしてた。


「近いうちに、ママの彼氏も含めてみんなで食事でも行かない?」



 そう言う母の目は、輝いてた。





 はっきりいってこういうの、面倒くさい!




「わかったよ!!



もうすぐ終わるから、おとなしくしてて」



 仕上げのハイライトを塗りながら、私は言った。



「夏季のメイク上手だから、やってもらって良かった〜♪



夏休みなんだから、夏季も彼氏とデートしないと、そのうち振られちゃうわよ!」



 そう言うと母は鏡を見つめ、髪を整え鼻歌を口ずさみながら玄関へと向かった。
< 2 / 243 >

この作品をシェア

pagetop