★ブルーの彼方★
父との想い出★。・~




−カッカッカッ…

 気がつくと遠くから、ハイヒールの足音が聞こえてきた。




母の足音かもしれない。



元気のいい日と、疲れ切って機嫌の悪い日が何となく足音でわかる。




今日は軽やかに歩いて来たように感じた。



「ただいまぁ!



あら? どうしたの?!


ご飯は?」



 何だか冴えない顔を私がしていたのか、心配そうに母が言った。



「まだ…」



「ちゃんと、お金置いといたのに」



 ぶつぶつ言いながら、冷蔵庫の中を物色してる。



「朝もちゃんと、食べてなかったでしょ?」



「食べたよ、パン買って」



 食欲なくて、本当は食べてないんだ…



「本当に?」



 ちょっと疑うようなまなざしで、私を見つめる。



「うん!」



 私は気付かれないように、大きく頷いた。



いつから、嘘をつくことを覚えたのかは、自分でもよくわからない。



ただ、母にはあんまり心配をかけたくなかった。


「どうしようかな?



ご飯は残ってるんだけどな」



困った表情で母は言った。
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