私の最悪の幼馴染。
「じゃあね」


曲がり角で、私は他の皆と別れを告げる。


ここからは私一人だ。


曲がり角を真っすぐ歩くと、公園がある。


幼いころ、よくここで遊んだ。


真中にゾウの滑り台があって、中は空洞になっている。


子供のころは、よくその中にもぐりこんで、かくれんぼをしたりした。


そこを通り過ぎようとすると、滑り台の頂上に、見慣れた男子の制服姿がある。


目を凝らしてみると、その人もこっちを見ている。


「・・・バカ、何見てんだよ」


あぁ。正体がわかった。


「別に。そういうハゲ童顔君はそこで何をしているのかな?」
「ちょ、お前、それなんだよ、『ハゲ童顔』って」


私だけが知っている。


隼人は、自分の毛が細いのを薄いと勘違いして、悩んでいるのだ。


時々家の洗面所で、髪の生え際をチェックしているのを、何度か目撃したことがある。


「畜生、覚えてろ」


何をなのかはよく分からないが、アイツは滑り台を子供のように滑り落ちてきて、


私のところまで歩いてきた。


そして、何故かそのまま歩いていく。


「おい」
「何」
「お前、何でぼーっとそんな所で突っ立ってるんだよ」


数歩前で、アイツが振り返って私を見ていた。


未だ傾いてない太陽の逆光が眩しくて、思わず目を細める。


「別に。ていうか、アンタここで何してたの」
「お前には関係ない」


私が歩きだすと、アイツも歩きだした。


いつもと、同じ距離。


決して縮まることのない、数歩の距離。


「分かった。私と一緒に帰りたくて待ってたんでしょ」
「バカじゃねえの?お前、正真正銘のバカだな」


ふん、と鼻で笑う隼人の横顔は、少し楽しそうにも思えた。


ふと、今日の昼休み、隼人を訪ねてきた後輩の女の子を思い出す。


とても、可愛い女の子だった。


私とは正反対で、女の子らしい、可愛い子。
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