私の最悪の幼馴染。
「・・・ふん」


彩子の隣の部屋で、隼人は1人、携帯電話の画面とにらめっこをしていた。


今、送られてきたメールへの返信をたばかりの画面が、そこにある。


「絵文字ぐらい、使ったらどうなんだよ」


誰に対して言っているのか、それは彼だけしかわからない。


教科書とノートを広げた机に突っ伏して、彼は携帯電話の画面を見つめていた。


受信ボックスには、友人たちや、女子たちからのメールが入っている。


そして、受信ボックスの下には、『彩子』と書かれたボックスがあった。


「・・・アイツ、・・・本当可愛くねえ」


画面に反射している彼の顔は、少し寂しそうに見えた。


さっきから、彼に頭の中には、今日の昼休みの事が思い出されていた。


学校で有名な古田、という男と、彩子の親友の麻子との会話。


唐突に知った、古田の気持ち。


それが、何度も何度も、頭の中でスロー再生されているのである。


「・・・畜生」


彼は携帯電話をベッドに放り投げた。


「どこが可愛いんだよ。あんな奴。悪態ばっかりつきやがって。勝気だし、性悪だし」


文句ばかり言う彼の顔は、決して怒りを帯びているものではなかった。


「本当、どうかしてるよ」


椅子から立ち上がり、彼はベッドの上へ飛び込むように乗っかって、寝ころんだ。


まっ白い天井を見つめながら、彼は、いつも言葉にする気持ちの裏を、


言葉にしてみた。


「・・・全部、古田の言うとおりなんだよなぁ」


隣の部屋の窓に、視線を移す。


窓に映るシルエットは、机に向かって勉強している彼女の姿。


ふと、彼の顔に笑みが浮かんだことに、彼自身、気が付いていなかった。


「俺以外にも、・・・いたんだな、アイツを見ている奴が」



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