私の最悪の幼馴染。
次の日、また母親のどなり声と隼人の厭味で朝を迎えた。


「ほら、早くしろよ、バカ」
「うるさい、このハゲ」


お互い口々に悪口を言いあいつつ、学校へ向かっていると、


うしろから、誰かが「彩子ちゃん」と呼んでいる声がした。


「あ、・・・古田君」


彼が屈託のない笑顔で、私の隣へと駆け寄る。


「毎朝2人で登校しているの?」
「え、違うよ。試験期間だけ。部活始まれば違うから」


今は試験期間だから、部活もお休み。


試験が終われば、隼人は朝練に参加するため、私より1時間早く家を出る。


「そっかぁ。良かった」
「・・・何が?」
「あ、ううん。こっちの話」


何故か上機嫌な様子で、古田君がニコニコ笑っていた。


試験まで、あと数日しかないというのに。


「ふん、お前、古田の前だと『女』なんだな」
「はぁ?何言ってるの」


その片側で、隼人が思いっきり機嫌の悪そうな顔をしている。


いつも私と喋っていると、機嫌は良さそうには見えないけど、


今は、いつも以上に、機嫌が悪い、というか、怒っているようにも見える。


「嫌だね、女は。こういうルックスの良い男の前だと、直ぐぶりっ子になる」
「はぁ?ちょっと、どこの口が」
「一之瀬君」


突然、古田君が、私の言葉をさえぎるように、喋りだした。


驚いて、2人で古田君の方を見た。


彼はとても真剣な顔をして、私たちを見つめていた。


「彩子ちゃんは、そんな子じゃないですよ。僕は、知ってます」
「・・・」


私は驚いてしまった。


何と言えば良いのか・・・よくわからないけど、


本当に真面目に、そう言ってくれているのはわかった。


古田君と目が合う。


にこ、と優しくほほ笑んでくれた。


その笑顔に、何故か心が温かくなる。


「・・っ、何だよ、マジになって」


バツの悪そうな顔をして、隼人が俯く。


「一之瀬君」


古田君が、一歩前に出て、隼人の目の前に立った。
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