私の最悪の幼馴染。
「おはよ」
「おはよう」
「どうした?今朝、隼人君、めちゃくちゃ機嫌が悪そうだったけど」


教室に入ると、麻子が開口一番、そのことを尋ねてきた。


ちらり、と隼人の席の方に目を遣ると、隼人は誰とも喋らないで、


何か本らしきものを取り出すと、教室を出て行ってしまった。


皆、気まずそうな感じで、ひそひそと何かをしゃべっている。


私は、さっきの古田君とのやり取りについて説明した。


「あー、・・・そう」


麻子は、何かに納得したかのような素振りを見せて、私の席の前の椅子に座った。


私もそれに合わせるように、自分の席に着く。


「・・・なるほどねぇ」
「何よ、なるほどって」
「いや、こっちの話。・・・ていうかさ、今日の昼休み、お昼は屋上で食べない?」
「えー?屋上?あそこってさ、カップルで賑わう所じゃん。浮くよ、完全に」


昼休みの屋上は、カップルたちのオアシスだ。


冷やかしで大勢で行く場合もあるらしいけど、友達同士で少人数で行っても、


何となく空しくなって帰ってくるだけ。


麻子もそれは分かっているはずなのに。


「いいじゃん。そのほうが好都合だし」
「え?どういうことよ」
「ま、それはお昼ね。さ、宿題、お願いしまーす」


さも当然のことのように、麻子は私に宿題を見せるよう頼んでくる。


これで、試験も切り抜けてしまう麻子は、ある意味天才のように思えた。


私は渋々英語と数学のノートを彼女の方に広げ、私は私用に、教科書を広げる。


「さ、やりますか」


腕まくりをする親友の企みに、私は昼休みに驚かされる事になることを、


その時は知らなかった。


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