私の最悪の幼馴染。
昇降口を出て、正門をくぐり抜けると、そこにアイツはいた。


門に背を寄りかからせて、両手をズボンのポケットに突っこんでいる。


何かを考えているのか、どこか遠い目をしていた。


不意に、隼人の人気の理由を知ることになる。


端正な顔立ちなのに、どこか少し影がある感じがするのだろう。


何となく声をかけたくなくて、その横顔を、少し拝んでいたかった。


だけど。


「遅えよ」


直ぐに気付かれ、アイツは私に近づいてきた。


「だっていきなり一緒に帰ろうとか言ってくるんだもん」


何とか言い訳を探すけど、上手い理由は見つからない。


だけど、隼人は言い訳などどうでも良いのか、それ以上問いただすことなく、


勝手に私の前を歩きだした。


数歩の距離が、私たちの間に存在した。


私はそれを縮めることなく、その後ろをついて歩いた。
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