私の最悪の幼馴染。
それから、私たちは一言も言葉を交わすことなく、歩き続けた。


何だか凄く気まずいけど、私の前を歩くその背中に、


たやすく言葉を投げるのは、どうしても躊躇われた。


無言のまま歩き続けて、家の近くの公園に来た。


ゾウの滑り台が見えた。


あの中に、何の違和感もなく入り込んでいた時期が懐かしい。


そういえば、昔、隼人と一緒によくあれで遊んだな。


そんな取り留めの無いことを思い出した時だった。


「なぁ」


突然、隼人が私たちの沈黙を破った。


「・・・何よ」


あまりに突然で、びっくりしてしまい、あまりに普通な声を出してしまった。


いつもは、怒った声を、わざと出すようにしていたのに。


「お前さ」


隼人の足が止まった。


そこは、公園の入り口だった。


公園にはだれもいない。


人通りは多くない場所だから、聞こえるのは、私たちの声と、


風が、木の葉の間を通り抜けていく音だけだった。


夏の香りが強く残る秋風が、頬をくすぐる。


「・・・お前さ、・・・のこと」
「え?」


木の葉の揺れる音で、良く聞こえなかった。


「ごめん、聞こえなかった」


隼人は、ちらり、と私を横目で見ると、大きなため息をついた。


「もういい」
「え、ちょっと、どういうことよ!」


隼人はどんどん先へ進んでいってしまう。


「ちょ、待ちなさいよ!一体何なのよ!」


私は怒鳴りながら、隼人の後を追いかけて行った。
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