連獄 ~終りなき物語~ 【ミステリー】
 奇妙な夢を見る頻度も比例して増して来ていた。警告にも似た夢はしきりにこの場所から逃げる事を訴えていた。それでもここに危険な事など何も無いのだから、窓から見える景色は都会にいた頃と比べものならないものだった。おそらく僕が住んでいたのは喧噪とした都会だったのだろう。おぼろげながらも記憶も戻りつつある。

「では…一度お会いしてみたらどうでしょうか?」

 なんて事のない提案だったのだが、何か恐ろしい予感がしてならなかった。そのことを彼女に告げると…

「おそらく記憶が戻らないことによるものだと…思います」

「…」

 まさか夢で見た内容が恐ろしくて、などと言える訳など無い。漠然とした不安感を抱きつつも、そのもう一人の記憶喪失の人に会いに行くことにした。
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