花を辿れば、
─白黒だった。
私の世界は、変わらずいつも白黒だった。
空も草も地面も人も建物も、桜でさえも。
確かに色が見えているのに、私にとっては無色でしかない。
色があっても、光が無いから心まで届かないのかもしれない。
でも光なんてどこにも無くて。
結局色は、消え失せていった。
「あ、の」
薄桃色の髪をした、紅の目を持つ整った顔立ちの女性。
目の前の彼女が口を開く。
総司はハッと目を見開いた。
だが、本当に驚いていたのは彼女の方だった。
─何故私は話し掛けているの?
...逃げなくちゃ。
この人、腰に刀を差しているもの。
きっと私を殺しに来たんだ。
この人の目が私を捉える前に、逃げなくちゃいけない。
けれど総司の瞳には、変わらず薄桃色が映っていて。
─その瞳に映っているのは私ですか?
そう問いたくなって、止めた。
そんなわけがないから。
きっと私の頭の上で綺麗に咲いている桜を見ているんだ。
この人も、次の瞬間には『あの目』で見てくるに違いない。
だが、その予想は大きく外れ、総司は優しい、本当に優しい目で彼女を見つめると、口を開いた。
「いきなりすみません。
えっと、感動してしまって...貴女はとても綺麗ですね。」
そう言って微笑む総司。
呆然とする彼女。