花を辿れば、
『また、ここに来たら会えますか?』
『?...多分。』
『.....じゃあ、また会いに来ても良いですか?』
─そう言ったら、少し驚いた様子の貴女がいて。
『...変な人。』
─そう言いながら薄く笑った貴女が、可愛らしくて。
貴女の表情がもっと見たいと、そう思った。
「ひーじかーたさんっ」
「あぁ?」
振り返った土方が美麗な顔を引きつらせた。
「なにお前、気持ち悪りぃんだけど。」
至極失礼な言葉を吐く土方。
だがそれも仕方ないことかもしれない。
頓所に帰ってくるなり、満面の笑みを浮かべ、音符が付くくらいご機嫌な声で自分の名前を呼ばれれば、誰でも少しは不審に思う。
土方の場合は、総司の日頃の行いが+αで付いてくる為、余計に身の危険を感じる。
「何ですかそれ!私まだ何もしてないじゃないですかっ!」
「何かすること前提だから質悪りんだよボケッ!!」
「土方さんのバカー!今日土方さんの夕餉にわさび盛ってやるーっ!!」
「地味に嫌がらせすんじゃねーっっ!!」
廊下で、しかも大きな声でこんなやり取りをしているにも関わらず、誰も出てきていない辺りがいつものことなのだと窺わせる。
というか、こんなんで大丈夫なのか新撰組。
ちなみに夕餉とは夕食のことである。
「ったく...で?
珍しいじゃねーか、何でそんなにご機嫌なんだよ。」
総司と逆向きの方向─自室に向けて歩き始めた土方の後ろをついて行く総司。
恐らく廊下では話せない、仕事のことだろうと考えていた頭を一旦止め、心外だという顔で土方の背中を見た。
「えー、別に珍しくは無いでしょう?」
「.....珍しいよ。」