花を辿れば、




「こんにーちはっ」



「!...貴方、本当に来たんですか。」





ここは壬生寺。
桜の木の下で鳥と戯れている彼女を見つけた総司は、さり気なく隣に座りつつも、口を開く。





「ええ、迷惑でした?」



「いえ、そうじゃないですけど...本当に、変な人。」




「私、そんなに変ですかねー?」





恋心を抱いている相手に、変だ変だと言われたら、流石の総司でも傷付く様だ。


しゅん、と項垂れている総司を見て、少し慌てている風に見えなくもない彼女が口を開いた。





「えっと、貴方が変なわけじゃないんですけど...私に自分から会いに来る人なんていなかったから。」





そう、何ともないように言った彼女を見上げる総司。





「私が会いに来ますよ。」



「...え?」




「私が必ず、貴女に会いに来ますから。
だから、待っていて下さいね。」





そう言って笑った総司をきょとん、とした顔で見上げていた彼女は、曖昧に返事をして総司から視線を外し、人差し指に乗っている小鳥に目を向けた。





─う...まだ信用されてないんだなぁ。





内心苦笑いしながらも、めげずに再び口を開く総司。





「そういえば、まだ名前を名乗っていませんでしたね。
私は沖田総司と申します。」




「...そうですか。」



「貴女の名前も教えてくれませんか?」





そう言った瞬間、彼女の小鳥を撫でる指が止まった。


どうかしたのかと総司が顔を覗こうとした時。





「化け物。」




「...へ?」




「化け物異人幽霊妖怪、或いはそれに近いもの諸々。
最近は鬼なんてよばれてます。」



「...あ、」




「無いんです。名前。
それって、名前を呼ぶ必要が無かったんですよね。」



「.....。」




「存在意義が、無いんですよ。」





─そう言い、嘲笑った貴女が、酷く寂しそうで。




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