花を辿れば、
「貴女がいつも桜みたいにふわりと笑っていてくれれば、最初に私が貴女を見つけた時みたいにすぐ見つかるでしょう?」
「ふふっ。何ですか、それ。」
─可笑しそうに笑う貴女を見て、安心した。
今だけは、このまま─。
『斬り捨てろ』
─いつか私の手で貴女を殺すことになるかもしれなくても。
「総司さん、」
─端麗な、どこか上品に感じる横顔。
愛らしい笑顔。
「ありがとうございます。」
「─私は、」
─私は貴女に御礼を言われるようなことは、何もしていないというのに。
結局全て自分の為だ。
貴女の寂しげな顔が見たくなくて、色んな表情を見たいと望んのは自分だったというのに。
貴女の笑った顔が見たくて、自分に向けてほしい一心で、貴女を『桜』にした。
昔、誰かに聞いたことがある。
桜と他の花の違いを。
桜は、下を向いて咲くのだ。
まるで、誰かに自分を見てほしいと言う様に。
「私は、何もしていませんよ。」
苦笑いした総司に、さくらがゆっくり、首を振った。
「総司さんが何もしていないと思っていても、私は何かされたと思っています。
話し掛けられたとか、名前を貰ったとか、そんなことじゃなくて...。
もし総司さんが私の為にしたことじゃなかったとしても、結果として私は救われたから。
だから、えっとですね...。」
黙る総司をちらと見て、言葉に詰まりながらも続ける。
「優しさって、必ずしも与えた方と与えられた方が同じ気持ちだとは思わないんです。
与えた方はもしかしたら無意識だったのかもしれない、嫌がらせのつもりだったのかもしれない。
でも、与えられた方がそれを優しさだと思ったら、それは優しさなんですよ。
もちろん逆もあると思いますけど...。
少なくとも私は、嬉しかったです。」