花を辿れば、
そこまで言うと、下を向いてしまったさくら。
─何で、この人なんだろう。
何てことない、ただの人間だ。
少し人に対して警戒心が強くて、感情を出すのが苦手で、だけど優しさを持った、ただの人間じゃないか。
誰が彼女を鬼にした?
誰が彼女を普通から引き離した?
そんなの、考えたって仕方がないことくらい、分かっているけれど。
「あ、の...総司さん?」
「...え?」
─気が付いたら、彼女を抱き締めていた。
顔を真っ赤に染める貴女が可愛らしくて。
「すみません、もうちょっと。」
「ええっ!?」
「あははっ」
─さくら、貴女がいくら優しいと言っても、やっぱり私は勝手なんですよ。
害が無くても、『鬼』だと言った町民をなんとかしなくちゃ、貴女を解放することは出来ない。
もしかしたら貴女が害となるまで続けるかもしれない。
分かっている。
貴女を殺すかもしれない確率は、決して少なくないと。
やっとさくらを放した総司は、頭の上から降ってくる花弁を見つめて、口を開いた。
「さくらは、桜の花が好きですか?」
「─好き、ですよ。」
そう言って微笑んださくら。
─それでも。
私は、今貴女と共に居ることを望みます。