花を辿れば、
あの日、さくらという名前がつけられた日から一週間が過ぎた。
相変わらずさくらの元を訪ねてくる総司を見つめながら、さくらはあの日のことを思い返していた。
─笑ったのは何年ぶりだっただろうか。
少なくとも十年近くは経っていたと思う。
上手く笑えていたかも分からないけれど。
凄く、嬉しかった。
「さくらさん?」
きょとん、とした顔で見る総司に、さくらは笑いかけた。
─私が桜なら、貴方は風の様な人ですね。
動けない私を優しく世界へ運んで行ってくれる、凄くすごく、優しい存在。
貴方となら、一緒に居れるかもしれないと思うのです。
...ううん。
私が、私が貴方と─
『化け物』
ビクッ
「...さくら?
どうかしましたか?」
「あ...何、でもないです。」
無表情で答えるさくら。
最近は少し減ってきたとはいえ、いつものことなのに、何故か総司は不安に駆られた。
心配そうな顔の総司。
─あぁ、まだ私は変われていないんだ。
貴方にそんな顔をさせてしまっている。
...何をやっているんだろう。
でも、変わってないことに安心感を覚えたのも事実で。
だって本当に変わっていいの?
信じていいの?
信じた後に裏切られる方が、よっぽど辛いのに─。
貴方を信じたい私と、信じたくない私、どっちが本心か。
「無理しないで下さいね、さくら。」
「...大丈夫ですよ。」
─分からないの。