花を辿れば、
総司が顔を歪めて、さくらの頬に手を伸ばした。
「さくら...泣かないで下さい。」
─あぁ私、いつの間に表情が戻ってたんだろう。
視界に入る、さっき自分を殺そうとしていた男など、もうどうでもよくて。
ボロボロと落ちる雫の止め方なんて、分からなくて。
どこも怪我なんてしていないけれど。
ただ、私の涙を拭う貴方の指の温かさだけが、私の心を締め付ける。
「さくら...。」
「....ごめんなさい、今日は帰ってもらえますか。」
「!?さく、」
「ごめ、なさい...ごめんなさい、ごめんなさ...っう..。」
─ごめんなさい...今は貴方の優しさが、痛いの。
それなのに『今日は』だなんて、愚かにも程がある。
「.....分かり、ました。
分かりましたから、泣かないで、さくら。」
─何故、貴方がそんな顔をするのですか?
何で、そんなに泣きそうな─。
ス、と離れた指を見てから、目線を逸らして俯いたさくら。
その姿を見つめてから、平助に一言「行きますよ。」と冷たく言い放ち、早足で歩を進める総司。
去っていく足音を耳にしながら、キュッと目を瞑ったさくら。
─貴方の優しさを嘘だと、夢だったのだと思えれば、どんなに楽なのでしょうか。
だけど、貴方の優しさに触れれば触れる程、それは本物でしかなくて。
もう、貴方を悪者にすることが出来なくて。
貴方への防衛線は、既に重ねることが出来ないくらいボロボロの様です。
こうなることは分かっていたはずなのに。
信じても、苦しいだけだと。
でも貴方が、全く悪いところを見せてくれないから、貴方が余りにも優しいから。
このままで居れると、調子に乗ってしまいました。
総司さん、どうか貴方を嫌いになる方法を私に教えて下さい。