花を辿れば、
「総司っ、」
「おいお前ら、廊下で何騒いでんだっっ!!
総司お前、また何かやらかしたのかっ!?」
「!副長...。」
俯いたままの総司に不安を抱いて話し掛けた平助だが、それは前からドタドタとやってきた土方によって中断された。
土方は苛立ちながら、未だに下を向いている総司を怒鳴りつける。
「お前はいつもいつも...っ!
おいこら聞いてんのか総司!!
.....総司?」
異変に気付いた土方が再び、しかし今度は静かに口を開く。
「総司、お前さっきの市中見回りの報告、まだ聞いてねぇぞ。
来い。」
「...おかしいですね、部下を向かわせたはずなのですが。」
「あぁ、どっかの組長が仕事帰りに突然走って道草しに行っちまったことまでしっかりな。
部下に心配させるとは随分な組長サンだなぁおい?」
─余計なことを。
明日の稽古で絞めてやろうか。
チッと小さく舌打ちをして、笑みを張り付けた顔を上げると、やっと口を開いた沖田。
「誰でしょうねー、そんな不真面目な人いましたっけ?
でもまぁ、土方さん暇みたいですし付き合ってあげますよ。」
「殴り飛ばされたいのかお前。」
いつも通りの会話に聞こえるが、いつも通りの雰囲気ではない二人。
その様子を後ろから見ていた平助は、足を進め出した総司に、慌てて話し掛ける。
「総司、待...っ!」
「平助。
話があります、後で部屋に向かいますから待っていて下さい。」
振り向かずに告げる総司。
それを横目に見つつも、口出ししない土方。
平助が返事を返す前に、二人は廊下の角を曲がって見えなくなった。