花を辿れば、
土方の口から出た無情の言葉が、総司へと降りかかる。
「殺すことに迷いを生むな。
いざという時に迷いなく殺すことが出来ないなら、そんな想いは捨てればいい。
どちらも出来ねぇと言うなら俺がお前を殺してやるよ。
中途半端にやってれば死ぬだけだからな。
それが『新撰組(ここ)』での生き方だ。
異論はあるか?」
淡々と話す土方から告げられる、あまりにも厳しい言葉。
それでも総司はそれが分かっていたかの様に、迷うことなくゆっくりと首を横に振った。
「ありません。
私は、ここで生きる為に、ここにいますから。」
そうはっきりと言葉を発した総司。
土方はそうか、と一言口にし、総司に背を向け自身の机の前に座った。
「話は終わった。行っていいぞ。」
「はい。
─土方さん。」
「...何だ。」
「土方さんを悪くなんて、思ってあげませんからね。
私は私の意志で、ここにいるんです。」
では、と静かに出ていった総司。
障子の向こうに気配を感じながら、土方は笑みを浮かべ呟いた。
「ばーか、思われてたまるかよ。」
土方は、障子の向こうの気配が遠ざかっていくのを感じながら、静かに瞼を閉じた。
─正直、土方さんの言ったことに従えると言えば嘘になる。
けれど、あの人が言っていることは間違いじゃないから。
もしかしたら、正しくないのかもしれない。
だけどあの人はいつも、私と同じモノを見ているから。
あの人が間違いならば私も間違いだ、だから私だけはあの人を否定しちゃいけない。
私があの人を否定する時は、あの人が私にとって反対となるモノを見た時だけ。
私はさくらが大切だけど、他にも大切なモノがある。
さくらへの想いと同じくらい、捨てられないモノがある。
意地と自尊心と共ににこびり付いた、想いが。