花を辿れば、
総司は表情を真剣なものに戻すと、ゆっくりと話し出した。
「次私に謝ったら、絶対許してやらないって決めてました。
本当に謝るべき相手はさくらなのに、それを放って私を利用して罪悪感から逃げるつもりだったのならね。
でも、どうやら本当に私に謝ることが他にあるみたいですね。」
その言葉に押し黙る平助。
だが、総司は優しい表情を向けたまま、平助に話し掛けた。
「理由は聞かないでおきます。
私が平助に何かを謝る時が来たら聞きましょう。
その時に教えて下さい。
その代わりおあいこですから、私のことも許して下さいね?」
「!それって...。」
笑みを浮かべ、そのまま何も言わず立ち上がって障子に手を掛けた総司。
「...総司。」
ス、と障子を開け、出て行こうとした総司が止まった。
開いた障子から射し込む夕日のせいか、平助には総司の後ろ姿が際立って見えた。
総司の、優しい背中が。
「『さくらさん』にはちゃんと謝っておくよ。
─ありがとう。」
風が総司の髪を撫で、平助の元に届いた。
冷たいはずのそれが、平助には不思議と温かく感じられた。
まるで、笑っている様だと。
平助の部屋を出た総司は、考え事に耽っていた。
─土方さんや平助と話したお陰で、覚悟は出来たみたいだ。
逃げることを止める覚悟が。
明日、さくらと会って話をしよう。
もしかしたら嫌われるかもしれないけれど。
...いや、既に嫌われているか。
思えば私が今までしてきたことは、さくらにとっては迷惑だったのかもしれない。
はっきりとした拒絶は無かったけれど、逆も無かった。
さくらが私に、会いたいと一言でも言ってきたことがあっただろうか?
そこまで考えていた総司の頭に、ふと言葉が浮かんだ。