花を辿れば、
朝日が差し込み、ひらひらと舞う薄桃色の花びらが輝いている。
同じく薄桃色の髪を輝かせているさくらは、昨日から一睡もせずに木に凭れて座ったまま、ぼーっと空を見上げていた。
─どれだけ考えたって答えなんて見つからなくて。
...ううん、本当はもう見つかってる。
だって私は、死ぬことにさえ何の感情も抱けない。
ずっとずっと、苦しかった。
どんなに年月が経っても、それは変わらなくて。
いっそ死にたいと、何度思っただろう。
けれど、生まれたわけも死んでいく意味も分からないまま、死にたくはなかった。
私は生きていた証が欲しかったわけじゃない。
誰かに生きてほしいと思われたかったわけじゃない。
そんな大きなことは望まないけれど、ただ。
ただ、何か理由が欲しかった。
私が生まれたことに、生きたことに、確かな理由が欲しくて。
だから、それが見つかるまでは生きていようと決めた。
死ぬ理由を得る為に生きるなんて、おかしな話だけど。
そして見つかった。
貴方に出会えたから。
存在意義を貰った。
生きる理由を貰った。
生まれたわけも理解した。
その上、死ぬ理由も貰えるんだから。
もう何も苦しまなくていいんだよ、私。
さくらは、空を見つめていた瞳を瞼で隠した。
その動作がまるで何かから逃げている様だと、一瞬過ぎった考えを振り払う様に手の甲を瞼の上に被せ、太陽の光を遮断して。
─意識が途切れる寸前に、猫の鳴き声が聞こえた気がした。