花を辿れば、




朝日が差し込み、ひらひらと舞う薄桃色の花びらが輝いている。




同じく薄桃色の髪を輝かせているさくらは、昨日から一睡もせずに木に凭れて座ったまま、ぼーっと空を見上げていた。





─どれだけ考えたって答えなんて見つからなくて。






...ううん、本当はもう見つかってる。




だって私は、死ぬことにさえ何の感情も抱けない。






ずっとずっと、苦しかった。





どんなに年月が経っても、それは変わらなくて。




いっそ死にたいと、何度思っただろう。






けれど、生まれたわけも死んでいく意味も分からないまま、死にたくはなかった。





私は生きていた証が欲しかったわけじゃない。




誰かに生きてほしいと思われたかったわけじゃない。




そんな大きなことは望まないけれど、ただ。






ただ、何か理由が欲しかった。




私が生まれたことに、生きたことに、確かな理由が欲しくて。




だから、それが見つかるまでは生きていようと決めた。





死ぬ理由を得る為に生きるなんて、おかしな話だけど。







そして見つかった。
貴方に出会えたから。





存在意義を貰った。


生きる理由を貰った。


生まれたわけも理解した。





その上、死ぬ理由も貰えるんだから。





もう何も苦しまなくていいんだよ、私。






さくらは、空を見つめていた瞳を瞼で隠した。




その動作がまるで何かから逃げている様だと、一瞬過ぎった考えを振り払う様に手の甲を瞼の上に被せ、太陽の光を遮断して。






─意識が途切れる寸前に、猫の鳴き声が聞こえた気がした。




< 50 / 52 >

この作品をシェア

pagetop