花を辿れば、
近藤勇。新撰組局長であり、総司の試衛館時代からの師である。
父親と早い内から死別した総司にとっては、兄であり父のような存在なのだろう。
総司は子供のように目を煌めかせながら、近藤に向かう場所を告げた。
「壬生寺に少し用がありまして。近藤さんは今お帰りですか?」
「あぁ。それにしても総司、また子供達と遊ぶのかい?
全く総司は、幾つになっても無邪気なままだなぁ。」
はっはっはっ、と笑う近藤を見て、総司が頬を膨らます。
「違いますよ、今日は仕事です。私だっていつもいつも遊んでるわけじゃないんですよ?」
そう弁解する総司を優しい目で見つめている近藤は、それでも総司が子供達に遊びを教えたり、お菓子を分け与えたりする、優しい青年だということを知っている。
「総司、仕事熱心なのはいいことだが、たまには休息も必要だぞ。総司くらいになれば寄ってくる女も多いだろう?
女の一人や二人作ってもいいんじゃないか?」
「いえ、どうも私は女性と遊ぶよりも剣の稽古をしている方が性に合うみたいでして。」
あははと笑いながらも、呆れた顔をしている近藤から目を逸らす。
総司はどちらかと言うと、あまり仕事熱心な方ではない。
それは近藤も知っているはずだ。
恐らく近藤は、あまり女性と関わりを持たない総司を心配して言ったのだろう。
二十歳を過ぎた男が、恋もせずに剣一筋に生きていくことが幸せなのだろうかと、疑問に思ったのかもしれない。