フェイク

二宮は一瞬動揺した後に彼の存在を思い出していた。

それは冬彦が最近手を出した闇金融の取り立てとして来ていた男だった。
彼は一般的なイメージの取り立てではなく、暴れたり、暴言をはいたりせず、紳士的に、そして無情に莫大な利子だけを積み重ねていた。

｢とぼけんなよ、親父が死んだのはテメェ等にも原因があるんだ…。｣

｢他人だったらどうする？一応大人であるからには若者が食いつきやすいような口調で自殺を一旦止めるだろう。それにお前みたいな子供をいつまでも覚えておく義理もないからな。芝居はここら辺にして本題に入るか。｣

｢黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…。
まだ俺から取り立てようって？そこまでして金が欲しいか？あぁ？どうなんだよ!?｣

二宮は男の胸ぐらを掴んだ。