かけがえのないもの
父は泣いていた。

普段は決して家族に涙を見せない父が、

言葉を聞き取るのも難しいほどに、

泣いていた。

「明日、瑠奈が家に帰ってくる…皆で、瑠奈の旅立ちを、見送ってあげよう…」

隼人には、まだ信じられなかった。

本当に瑠奈が死んだというなら、

今目の前に瑠奈がいる事実の説明がつかない。

「嘘だろ…?瑠奈、今俺のとこにいるよ…」

「何を言ってるんだ…」

父の様子から考えても、嘘ではないということが分かった。
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